HAPPY NEW YEAR



『新年・うさ親な元親SS』

 1月1日、元親は目が覚めると同時に頭とお尻に違和感を感じた。
「なんだぁ?」
 寝ぼけた頭で手を動かして頭とお尻辺りを確認すると、フサフサとしたものが手に当たる。
「ああ?毛皮ぁ?・・・・野良猫でも入り込んだかぁ?・・・」
 元親は、その手に触れた獣らしきものを布団から追い出そうと、頭辺りにあるそれに手を掛けグッと握った。
 その瞬間、
「痛ってぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 元親は布団から飛び出した。なぜなら、今まで感じた事もない激痛を耳に感じたからであった。
「な・・なんだぁ、この痛みはよぉ」
 そう言って、今だ自分の手が握っているそれを確認するように触る。
 フサフサとした獣のやわらかい毛が覆う長いもの、それを下に辿っていくと自分の頭に手が行き着いた。
「?!・・なんだ?・・」 
 元親は嫌な汗が首筋を伝うのを感じながらお尻の辺りにも触ってみた。
「のあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!な・なんだぁこれは〜〜〜!!!!!」
 元親の手にはフサフサとした丸い物が当たる。そしてそれは自分の尻から生えているのが感じられた。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 元親は驚きの叫びを上げながら庭に飛び出し、凍った池を覗き込むと自分の姿を映した。
「こ・こいつは・・・・」
 ぼんやりと映る自分の頭に白くふわふわとした物が生えている。
 元親は恐る恐るもう一度それに手を掛けると、氷の表面に近付け確認するように見ると一瞬気を失いそうになった。
 元親の頭に生えるものは白くフサフサとして長い耳、そう、それは紛うことなき兎の耳であった。
「な・・・なんでだぁ?」
 元親が池の前で愕然としていると、元親の声を聞きつけて政宗が遣って来た。
「HEY、元親どうした?凄ぇ声が聞こえたぞ」
「政宗・・・・」
 新年早々、この世の末のような元親の叫び声に駆けつけた政宗の目に、池の前でうな垂れる元親の姿があった。
「元親?なんでそんな池の傍で座っ・・・・・・・・What?元親その頭に付いているものは・・・・」
 政宗の問いに元親は情けない顔で振り返った。
「政宗ぇ〜〜、何だかわからねぇけど、起きたらこんな・・・」
「Beautiful!!」
「は?」
 元親は政宗の言葉に目が点になった。
「元親いいぜ、可愛い・・いや、白いその耳が良く似合って、むしろ美しいぜっっ!!!」
 元親の泣きたい気持ちとは裏腹に、政宗の目に好機の色が広がっていく。
 元親は政宗のその様子に何か得体の知れない危険を察知した。
「ま・政宗、いや、その、褒めてもらってこんなこと言うのは悪ぃとは思うんだけどよ、だけどよ・・・
なんだ、この耳は何で生えたかわからねぇやつでその」
「HA?なんで生えたかわからねえ?HAHA〜〜、そんなことはどおでもいい、大事なのはそれがてめえに似合ってるかどうかだけだ」
 政宗の言葉に元親は愕然とする。するとそんな元親を見た政宗が言った。
「HEY、元親そんな顔をするんじゃねえ、せっかくの新年だ、その姿は今年を祝う為にどっかの神さんがてめえにくれたのかもしれねえ、
せっかくだからよ、その姿に似合う着物を構えるぜ、HEY、小十郎!!!」
「は、政宗様」
 政宗の言葉に小十郎が屋敷の奥からなにやら抱えてやってくる。
 元親はその手元を見ると小十郎が何か黒い色の物を持っているのが見えた。
 元親はこれから何を着せられるのか不安な気持ちで政宗を見る。
「HA、元親、どんな着物か気になるか?大〜丈夫だ、心〜配するな、今のてめえにピッタリのヤツだからよ」
 そう言うと、政宗は不敵な笑い顔で小十郎からその着物を受け取り元親の前に広げた。
「HEY、どうだ南蛮でBunny Girl.と言われる衣装だ」
 元親は政宗の広げたそれに目をやると、全身の汗が噴き出すのを感じた。政宗の持っているそれは、体の形にピッタリと添う作りの
どう見ても、女性用の代物であったからだ。
「HEY、元親、これで新年を飾ってくれ」
「さあ、西海の鬼、政宗の言うとおりに!!」
 池の傍で崩れる元親に政宗と小十郎が迫ってくる。
 元親はその圧力に、後ずさるが池が後ろにあるせいでその場に凍りついた。
「HEY、今年のてめえのテーマはBeautiful Rabbitだぜ!」
「さあ、西海の鬼〜〜〜」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
      ・
      ・
      ・
「・・・ってよ、みたいな夢だったんだぜ」
「これはまた、珍妙な夢でございますねぇ、父上」
 ここは四国の元親の屋敷、新年のおせち料理を食べながら元親は息子信親に今朝見た夢の話をしていた。
「あぁ、新年早々に変な夢見ちまったぜ、まったく、卯年だかってよ、なんで俺が兎になるんだぁ?」
「まあまあ父上、夢だったのですから、いいじゃあありませんか」
 新年早々に見た珍妙な夢に元親が複雑な顔をする、そんな元親を見て信親は小さく笑いながら言った。
「しかし兎の父上ってちょっと見てみたい気はしますねえ」
「え?」
「ああ、いえ、別に深い意味はありません、ところで父上、先ほど新年の贈り物として奥州の伊達殿よりなにか届いていましたよ。」
「贈り物〜〜?・・・・」
 信親がそう言うと、元親の前に茶箱ほどの大きさの箱が運ばれてきた。
 箱にはど派手な赤と金のしめ飾りが付いている。
「はぁ〜、新年の贈り物とは政宗も粋な事をするじゃねぇか」
「いったい何が入っているのでしょうね」
 元親は早速飾りを外すと箱を開けた。
 次の瞬間、箱の蓋を持ったまま元親が凍りついた様に動きを止めた。
「父上?いかがいたされました?」
 信親がその様子に箱の中を覗き込むと、信親の目に作り物の兎の耳と尻尾が映った。
「これは・・・」
 信親は添えられていた手紙を見た。

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『 愛する元親へ
HEY、HAPPY NEW YEAR
今年はRabbitの年だぜ!
なので、これを送る。
たぶん7日頃にはそっちに着くからよ
これを着けて待ってろよ。

  てめえのLovers政宗より』
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 元親は今だ箱の中を見たまま凍りついている。
 信親は箱の中から兎の耳を取り出すと、元親に言った。
「父上、今朝の夢は初夢で正夢だったのですね〜〜〜、まあ、せっかく頂いたのですから着けてみてはどうでしょう?きっと似合うと思いますよ。」
 信親がにっこり笑いながら、元親に兎の耳を差し出す。
 元親は目の前が真っ白になりながら、また今年1年政宗達に振り回されるであろうことを感じたのであった。

「父上〜、尻尾もあります、ほら、可愛い!」
「いやぁぁぁ〜〜〜〜」



おしまい(汗)


今年もよろしく、お願いいたします。

2011/1/3 はたけのかつお&いちご松林檎


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