【ごっこ遊び】(ケイ×チカ、注:R-18)





夏の夜、夜の拝観なお城の天守閣で・・・


「はぁ〜〜( ´△`)夜の拝観っのもなかなか良いもんだなぁ」
元親は、前を行く慶次にそう言いながら辺りをキョロキョロと見回した。
ここは南国、古のお城。夏の夜に開かれた夜のお城の特別拝観。
元親が先ほど言ったように、慶次と元親は、夜の城にやって来ていた。

城に興味があるのかどうかは解らぬが、元親の携帯に『一緒に行こう』と慶次からメールが入ったのが、夕刻時の空が紫に染まる時間帯であった。
「夜の拝観〜?」
元親は一瞬だけ眉間の皺に指を当て、慶次の意図を考える。
だが、いつもあまり考えずに直感で動く慶次のことを思うと、多分今回も、ポスターか何かを見て思い立ったのだろうと元親は思った。
「夜の拝観かぁ・・」
元親は慶次に誘われでもしない限り、そんなところになど自分から行くことはないだろうと考えると、突然発生したイベントに便乗しても悪くないと思った。


「そう言や、俺ぁ夜どころか城にもあんまり来たことなかったなぁ」
 元親が先を行く慶次にそう言いながら、薄暗くなる城の城壁を眺め見る。
「え、そうなの?ここの天守閣からみた城下町は綺麗だよ〜、だからきっと夜の景色も最高だと思うよ♪」
慶次の言葉に元親は口端を上げて小さく笑う。
前を行く慶次が軽快に大きめの石段を上がっていくのを元親は追いかけるように城へと進んだ。


「ふう、やっと着いたねえ〜 ♪」
慶次がそう言うと同時に、元親は天守閣に上がる階段の最後の段に足をかけた。
「はぁ、昔の建物の階段はキツ・・・、おお、なんだすげえなここ!」
元親の目の前には立派な天守の内装と開け放たれた窓の向こうの美しい夜景が広がる。
「ここまできれいとは俺も想像してなかったよ、来てよかったね」
慶次が感動したように元親にニッコリと笑いかけると、元親はそんな慶次にニカリと笑顔を返し勢いよく最後の段を踏みしめるように天守に上がった。
「おぉ、本当にすげえなぁ、ここから夜景を拝めるなんて思ってもなかったぜ」
元親がまるではしゃぐかのように開け放たれた窓に近づき身を乗り出してみる。
すると窓の外はまるでバルコニーのように外に出られることに気付いた元親は慶次に確認するように聞いてみた。
「なあ、ここ、出ても大丈夫と思うかぁ?」
「え?ああ、外の廻縁ね、大丈夫だよ、昼の拝観の時は出てるから」
慶次の言葉に更に笑顔をほころばせ、元親は天守閣の外に出ると涼しい夜の風に目を細めた。
「本当に夜景が綺麗だね」
元親の横に並ぶように慶次も外に出てくるとその景色に思わずそう言葉が口をついて出る。
 元親は慶次の言葉にもう一度眼前の夜景に目を見張るとキョロキョロと周りを見渡した。
「なぁ、この天守閣って、360度城下がちゃんと見えるんだなぁ、なんかこう、ぐるっと見回す景色が全部夜景ってのはスゲエ贅沢だなぁ」
 元親がそう言って天守閣の壁に沿って少しずつ移動をし始める。
 すると慶次もその後に続くように移動した。
「はは、なんかよぅ、俺が動くと夜景も動くだろ、それってよ、それってちょっと夜の海の波みたいにも見えるよな?」
「波?」
「ああ、昔よフェリーだったかに乗ったとき、夜の海の波しぶきが船の明かりでちょっと綺麗でよ、こう波打ちながら移動していたのを思い出したぜ」
「へえ、波ねえ・・・」
 元親が一人懐かしいがってる姿に慶次は少しだけ考えるような仕草を見せる、そして少しずつ移動している元親が天守の角に差し掛かったとき慶次は何かを思いついたように言った。
「あ、まって元親!そこで止まって!」
「あぁ?」
 急に歩みを止められ、何だ?とばかりに振り返る元親。
 すると、後ろからきた慶次が言った。
「ねえ元親、そこの角の高欄(手摺)で止まって!」
「あぁ?こうらん?・・・ああ、この手摺の柱のことかぁ?」
「そう、その角の高欄で外向けに手を広げて立ってみて」
「はぁ?なんで?」
「いいから、早く」
 突然何かを思いついた慶次に、元親は一瞬眉を顰める。
 だがそれを吹き飛ばすかのような勢いで近付く慶次に、まるで押されるかのように元親は慶次に言われた通りに外向けに手を広げて立ってみた。
「こ、こうかぁ?・・・・・・・・・な、何してんだ?慶次!」
 元親が手を広げた次の瞬間、後ろから近付いてきた慶次が元親の腰に手を回して抱きしめた。
「え?ほらタイタニック!」
「はぁ?」
「いや今ね、元親が夜景が波みたいって言ったときに俺、閃いたの、ほら夜景が波ならこの高欄が調度船首の部分に見えるでしょだから、だから、映画のタイタニック!」
 まるで子供のように嬉しそうにそう言う慶次。
 そんな慶次に元親は、一瞬『そうか』とは思ったものの、直ぐに今の状況に我に帰った。
 ここは観光地のお城の天守閣、確かに夜の拝観ということもあって、城の中の拝観者は昼に比べればはるかに少ない、だがしかしこの城は夜はライトアップされている。
 今の状況を下から見れば、デカイ男が二人天守閣で抱き合っている姿がライトアップされていることになる。
「こ、こら慶次!や・やめねえか」
「え〜、なんで?楽しいでしょ?」
「楽しいも何も、下からこの姿は丸見えなんだぞ」
「大丈夫大丈夫、今下に人いないから」
「だ・大丈夫じゃねぇ、下に人がいなくても、いろんなところから丸見えなんだぁ〜〜」
 元親は後ろから抱きつく慶次の手を引き剥がそうと力を込める。
 だが、元親よりも体格のいい慶次の腕はそう簡単には剥がれない、それどころか元親が腕を引き剥がそうとすればするほど体をピタリと元親にひき付けてきた。
「こ・こ・こら、慶次・・こ・腰を押し付けてくるんじゃ・ねえ!」
「え〜、だって元親が無理矢理腕を外そうとするからだよ」
「な・・当たり前だろぅ・・あ・こらこらこらこら・・・」
 元親が慌て困ったように身をよじる、するとその耳元で慶次が言った。
「わかった・・・じゃあ後で俺の部屋に来て一緒にご飯たべて過ごしてくれるなら離してあげるけど?」
「え?飯?それでいいのか?喰う喰う喰う、一緒に喰うから!!」
「ご飯の後も、一緒だよ?」
「わかった!・・・わかったから一緒にだな、わかった」
 その一言に、元親に見えない慶次の顔はニタリと歪む。
「本当!約束だよ!じゃあ離してあげる」
 慶次は満面の笑みを浮かべながらその腕を元親の腰からスルリと外した。
「はぁぁ、慶次てめえ、なぁ・・」
 恥ずかしい状況から開放された元親が、怒り口調で慶次に文句をいいかける。
 するとその時、慶次は余裕の表情で元親の顔を覗き込み、ニコリと笑うと元親の耳元に近付き言った。

「夜の航海綺麗だったね、でもタイタニックごっこは終わってないから、元親が沈没するのは『俺の腕の中』だからね!!」
「・・・ぇ?・・・・・・あぁ〜〜?!(汗〜〜)」

 元親が始めて体験した夜の拝観、城に上がったはずなのに、何時の間にか慶次の策という海に飲み込まれていたのでありました。



おしまい(落ちない・・・汗)


いちご松林檎


8月の終わりに/高/知/のお城の夜の拝観行った際に沸いた妄想。
写真はその時撮ったヤツ〜〜。
チカチャン達の変わりにパインがあの角に立って「むふふふふふふ〜〜〜」っておりました。(大汗)
今回は、慶ちゃんがめちゃ怪しいけど楽しい妄想でございました。

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