【ぽかぽかの日に・・・】

毎日毎日寒い冬。
そんな寒い冬のとある一日。ぽっこり暖かくなった日に、元親は港に着けた船の甲板で、
のんびりと作業する野郎共を見ながら大きな大きなあくびを一つ。

「ふあぁぁぁぁぁぁ」

「ああ、アニキこりゃまたでっかいあくびですねぇ」

側で見ていた野郎共の一人が、そんな元親に声をかける。
すると、元親はそんな野郎共に、少しばかり涙腺の緩んだ笑顔をニカリとつくった。
「あぁ、昨日まで空気が肌に刺すくれぇ寒かったのによぅ、今日は急に暖かくなったからよ、
こう気が緩んじまったのよ」

元親は、声をかけた野郎共にそう答えながら、船の甲板から見える港の様子を眩しそうに
目を細めるように眺めると、とある風景に釘付けになった。
元親の目を捉えた光景は、何の変哲も無い只の風景、大きな蔵の広い瓦屋根が、久方ぶりの
暖かい太陽の日にキラキラと、まるで日の当たる海の水面のように輝いている。
元親が、何故そんな風景に目を奪われたのかというと、その広い屋根の上で、猫が三匹昼寝を
している姿に目を奪われたのであった。

元親の目を捉えた三匹の猫は、寒さが続く合間のいい天気に、これ幸いと日向ぼっこをしている
のであろうか、三匹が三匹とも目を閉じゆったりと寝そべっている。
だが、それだけで目が釘付けになったのではない。その三匹の寝そべり方がまるで重なるように
寝そべっていたからだった。
しかもその三匹の猫の毛は黒猫、トラ猫、白猫とまるで違う毛並みをしている、そんな三匹が重なる
姿は、三色の餅が重なっているかのようだ。

元親はその光景を見ながら『なんだぁ、あれだけ毛並みが違うって事は、親子兄弟じゃねえよなぁ?』
と心の中で思いながら、重なりながらも気持ち良さそうに目を細めている猫達を少しだけ羨ましそうに
じ〜っと眺めていた。

「ああ?、アニキなに見てるんですかぃ?・・・」
先ほどまで話をしていた野郎共が、元親の様子にその視線の先を見る。

「ああ!猫ですかぃ!ははは、きっとあいつら今日の陽気に誘われて出てきたんですぜ、なんだぁ
気持ち良さそうに屋根の上で昼寝をしてらぁ」
野郎共が元親の考えていた事と同じような事を言うと、元親はなんだか面白いように口の端を
ニィと笑わせる。
すると野郎共は何かを思い描くような考えるようなそんな雰囲気で続けるように元親に言った。

「しかし、あれですねえ」

「なんだぁ?」
「あの三匹ですよ、あんなにくっついているのに、まるで毛の色が違うじゃねえですか」
「あぁ、そうだなあ」

「なんかあれって、何かに似てるなと思ったんですがね・・、あれって・・・まるで、アニキと伊達の
お頭と慶次さんみたいじゃねえですかい?」

「はぁ?」

元親は、野郎共の例えに『目の前の猫がなんでそうなる?』と思いながら声を荒げる。
するとそんな元親に、その野郎共は、何だか楽しいように元親にこう言った。
「だって、なんだか仲のいい仲間が肩寄せ合ってるみたいにみえるでしょ。たぶんあいつ等は
仲間どうしなんですよ」
元親は、その言葉にあっけに取られる。野郎共達が自分と政宗と慶次をそうゆう風に見ていたかと
思うと、なんだか嬉しくなってきて、その三匹の猫に『何時までもいい仲間でいてくれよ』と心の中で
そっと思ったのであった。




2月26日の地元のイベントで配布したペーパーのSSです。

まったりなほのぼのSS、アニキの野郎共は、皆結構ロマンチックな野郎共が多いのではないかな、とパインは思います。
だってロマンを追いかける、海の男達なのですものね。
いいなぁ、海の男達のロマンって!
ま、その中心には何時もアニキがいるのでしょうがね・・、はは

いちご松林檎


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