四国の夏の続きの話・・・完成しました。って言っても短いです。
たいした内容ではないのですが一応R15にします。15未満の方ごめんなさい.
**Sleeping beautiful**
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ザザーン・サァーー・ザザーン・・・
静かな波の音で政宗は目を覚ました。
一瞬、自分が何処に居るのか解らなかったが、静かな揺れに船の上にいることを思い出した。
南国の夏を体験したいと四国まで行ったものの日差しの厳しさに参ってしまい、、十日ほどの滞在で四国を後にしたのだ。
「ちっ、俺は大丈夫だって言ったんだがよ。」
そんな言葉が勝手に口を突いて出る、暑さにやられた政宗の余りにもの憔悴っぷりに小十郎が奥州への帰航を申し出たのだ。
政宗の様子を心配していた元親も小十郎に賛成し今に至っている。
ザザーン・ザザーン・・・
今はいく刻だろうか、薄暗い月明りの甲板に出てみる。
「伊達のお頭、眠れませんかい?」
海の様子を見張っている長宗我部の手下が声をかけてくる。
「ああ?いやそういうわけじゃねぇんだがよ、何ていうかこう目が覚めちまっただけだ。」
政宗の様子に手下は親近感を覚える。
「ああそうですかい、ひょっとしたら空気が変わっていくのを知らず知らずのうちに感じ取っているのかもしれやせんね。」
「空気が?」
政宗の問いに嬉しそうに手下が答える。
「そうなんでさぁ、こう南から北へ船を渡らせていると空気が段々涼しく厳しくなってくるのを感じるんで、それに南の方は空気がもっと湿ってるんですが、
北に進むにしたがってその湿りが薄くなってくる、『海に浮かんでて何が湿り気だ』と笑われるかもしれやせんが、俺ら船に乗る者はそおゆうのを感じながら
海渡ってるんですよ。」
元親も然り長宗我部の男達は皆内側から溢れ出すような陽気さと親しさを持っているのだなと思いながら政宗は聞いている。
「此処のアニキも、同じこと絶対言いますぜ。こう空気が変わり始めると、天気の悪い日以外の夜は大概あそこに居やすからね。」
そう言って手下は見張り台よりもさらに上に作られた物見台を指差した。
「元親、上がるぜ。」
物見台に手を架けて声をかける、返事が無いのでそのまま上がりこんだ。
大人が5・6人座れる程しかない物見台の上に元親は仰向けに寝転がったまま眠っている。
政宗は眠った元親の顔を覗き込み、
「ヒュー、Sleeping beautiful だぜ。」
そう言って、元親の口に接吻をした。
『ぴちゃり』
生温かな何かが唇に触れた感覚と奇妙な音に、元親は目を開けた。
「んん・・?」
目の前に政宗の顔がある事に驚いて飛び起きた。
「な、何しやがってんだ政宗!」
政宗は予想以上の反応にニヤリと顔を笑わせてこう言った。
「Morning、起きちまったか、なあに南蛮式の起こし方をしてみただけよ。なんでも眠りっぱなしのお姫さんを起こしたやり方だそうからな。」
愉快そうに言う政宗に、
「俺は姫さんなんかじゃねえぜ。」
元親が少し不機嫌そうな顔をする。
「Hahaha、そりゃそうだ、おめえは西海の鬼の長曾我部元親だ、てめえみたいなお姫さんがいたら怖えぜ、いや?そんなお姫さんだったら俺が嫁にしてやるか?」
「何言ってやがる。」
突然目の前に現れたかと思うと、なにやら理解出来ないことを言って笑っている政宗に元親は呆れながら訊いた。
「何だぁ政宗、こんなところまで上がってきてどうしたんだ?眠れねぇのか?」
元親の問いに、政宗は元親の隣に腰を下ろしながら答える。
「眠れねえと言うか、なんだ目が覚めちまったんだ。」
政宗の言葉に元親は、『ああ、そうか、』といったような顔をして言った。
「俺のところでは暑さであまり寝れてなかったみてえだったからなぁ、舟に乗ってちぃっと涼しくなったところで眠ろうと思ってもかえってどこか
頭の中が冴えちまってんのかもなぁ。それにこの辺りから肌に感じる空気が変わってくるからな、そんなのも知らねぇ間に感じているのかもな」
元親の言葉を聞いて政宗はHa ha ha と笑う。
「なんだぁ俺ぁなんか可笑しいことでも言ったか?」
不思議そうにそう言う元親に政宗は言う。
「いや、さっきここに上がってくる前に、見張りしているおめえの手下も、同んなじ事言っててよ、絶対おめえも同じこと言うって言ってたんだ。」
「は、そんなこと言ってたのか、なんでぇ先越されちまったなぁ。」
そう言いながらも元親は嬉しそうに顔を緩めた。
政宗はそんな元親をジィっと見ている、天下取りに忙しい自分には無い大雑把でおおらかなその魅力は、西海の鬼を慕う仲間とこの大きな海が
作っているのかと思うと少しだけ羨ましく感てしまう。
だが、それは自分には許されることではない、ならばこの元親を伊達の者として抱き込んでしまおうと何度も思うがいつもうまくかわされてきた。
「なあ元親、伊達に腰を据えねえか?、おめえが海軍を率いてくれたら天下なんてあっという間だぜ。」
そう言う政宗を横目で見ながら元親はニヤっと笑う。
「まだそんなこと言ってんのか政宗、俺は天下には興味はねえっていってんだろ・・」
元親の返事に政宗は『解ってるけどよ』という顔をした。
ザザーン・サァーー・ザザーン・・
波の音が静かに響いている。
ふと元親は隣を見た、政宗が静かに寝息を立てている。
「俺が寝首をかくなんてこたぁ、全く考えてねぇのかぁ?」
そう笑いながら小さく呟く。
「眠りっぱなしの姫さんか・・」
元親は政宗の顔を覗き込む、自分も起こしてやろうかと唇を近づけてみたがやっぱり思い直してやめた。
「ずっと眠っていやがれ。」
そう言って額に軽く接吻をして、自分もまた転がった。
ザザーン・ザザーン・・・
波の音が心地いい。
元親は政宗の背負うものを知っている、たとえ自分で選んだのだとしてもやはり重たく感じる時があるのだろうと思う。
元親は政宗に、
『海の上にいる間は、おめぇも自由人(じゆうびと)だ。』
と、言ってやりたいと思いながら目を瞑った。
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甘甘です。書いてて「めっちゃ、あまあまや〜ん」って恥ずかしくなっちゃったです。「全然Rじゃないじゃん」と思われた方ごめんなさい
2008/08/24 ブログ掲載 若干修正箇所有